株式会社スガテック

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プロジェクトストーリー

プロジェクトストーリー

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3DLクーラー集塵ダクト据付工事
(燃結機環境対策工事)

プロジェクトを担当する者たちの胸には、常にスガテックの技術者としての「誇り」があります。ここでご紹介するのは、第3焼結工場の焼結環境対策工事に関わった技術者たちの闘いです。現場で設計を担当した本多を除く、鈴木、足立にとって、本案件はすでに経験している工事内容。しかし、いざ工事に取りかかると、それは条件的に困難を極めるものでした。据付場所が狭い、周囲に大きな重機を置くスペースがない、ダクトを含めた付帯設備が大きく重量があるうえに形状が特殊などなど。現場には越えなければならない多くの高いハードルがあったのです。プロジェクトをけん引した彼らは、どのようにそれを乗り越えたのでしょうか。

日本製鉄 名古屋製鉄所 第1・3高炉

 

『高炉のスガ』として培ったノウハウを、
製鉄プラントの総合エンジニアリング技術に活かす

 

 『高炉のスガ』。これはプラントエンジニアリング業界でスガテックに与えられた称号です。当社の輝かしい伝統と実績に裏付けられた評価であり、スガテックの誇りといえるものです。しかし、製鉄所は高炉だけで成り立っているのではありません。高炉を中心に原料荷役機械、コークス炉、焼結機、転炉、鋳造機、圧延機など実にさまざまな設備・機械が集合し、それらをベルトコンベアや複雑に入り組んだパイプラインが結んでいます。さらにそれぞれの設備には、環境対策装置が設置されます。その集合体がいわゆる製鉄プラント。スガテックは称号そのままに高炉だけを見つめているわけではなく、総合エンジニアリング会社として、製鉄プラント全域の設備における新規建設から改修工事、整備にいたるまで高い施工技術を発揮しています。第3焼結工場の焼結環境対策工事でも、当社の技術が遺憾なく発揮されました。

 

 

 

ダクトの設計、据付といっても単純ではない。
さまざまな知識と技術の総合力が実を結ぶ。

 

 「案件名は『3DLクーラー集塵ダクト据付工事』ですが、言い換えれば焼結機の環境対策です。焼結工程でクーラー排気塔から出るダスト(粉塵)を外に出さないように、焼結機から集塵機にダクトを通して集める設備を据付ける工事で、大きな固定の掃除機と鉄でできた巨大なホースをイメージすれば分かると思います」
 解りやすい例えで話すのは、このプロジェクトの施工工程全体を管理・監督した鈴木 崇。「簡単に言えばそれだけのことですが、今回は規模が大きいのに加え、据付場所の条件も厳しくて、設計にも現場の職人にも苦労をかけました。しかし本工事をやり遂げたことは、設計担当でまだ若い本多や監督の足立にも自信につながったのではないかと思っています」
 同工事はスガテックにとっても大規模の部類に入るものでした。計画段階から数えると竣工まで約1年半の長期工事であり、使われた鉄は総重量840トン、ダクトは最大直径5,500mm、設備の高さは最高36mにも。この工事には、のべ約4,200人の人間が携わることになりました。
 ダクトと架台の設計を担当した本多純也曰く「正直辛さもありました。設計に異動になって初めての仕事で、経験値が少ないために分からないことだらけ。自分で図面を引いても、本当にこれでいいのか評価できないのですから。何度も現場に出て寸法を測り、監督の鈴木さんや足立さんに聞きまくって、何とか形にできました。二人のおかげだと思っています」
 本多に対する鈴木の評価は「初めての設計でこれだけの案件をやったのだから、『すごい』のひとこと。本多はよく現場に足を運んで、生の声を聞いて図面に反映させているから、実際の工事がやりやすいんです。たまにミスはありますが、その対応もすばやく的確だから、本当に任せたくなる」と、かなりのものでした。
 設計の仕事は単にCADで機械や設備の寸法を図面に写しているだけではありません。機械や架台の設置場所といった全体のレイアウト検討、例えばダクトならそこを通る物体の性質や量の計算、部材の強度など条件整理を綿密に行ったうえで、各パーツの詳細設計に進みます。設計では強度検討が一番重要とされ、メカの知識のほかにも熱力学や流体力学、素材など金属化学の知識が総動員されます。そこが疎かにされると、機械やダクトなどの配管に穴が開くこともあるのです。定型的な形をトレースするだけなら誰でもできるため、高効率やローコスト化を形にするアイデアやセンスも問われます。その設計センスが形として現れたのも今回のプロジェクトの特徴だったと言えます。

 

 

エンジニアとしての喜びは、
「世の中に役立つものをつくっている」と実感できること。

 

 「重量をできるだけ軽くしたかったので通せる最短ルートを追求したら、3次元の形状になったんです。CADで何回もシミュレーションして、設計上では据付も可能と自信はありましたが、実際付くのを見るまではちょっと不安はありました」(本多)
 ダクト据付の工事監督だった足立 純は、そのダクトと実際の工事についてこう語っている。「固定観念ですが、配管はどんなに曲がっていても90度とか2次元でなんです。こんな3次元の形に曲がっているものは見たことなかったから、はじめはどうなっているのこれ? と思いました。ここで55度曲がって、21度こちらに傾いて、さらにねじれて上方に15度といった感じで、完成形を想像しながら理解するのに時間がかかりました。しかし、本多の図面を見て、なるほど、このスペースにダクトを通すには理想的な形だと思いました。ただ据付では本当に付くのかと不安もありました。誰もやったことないんですから」 最大直径5.5m、全長141.2m、総重量168トンのダクトは、最初から1本として成型するのではなく、最終的にはいくつものパーツに分割して段階的に組み上げながら据付ける工法が採られました。「地組みできませんから、大型クレーンで吊りあげて一つひとつボルトや特殊なベルト、溶接で組上げていきます。苦労したのは接合面が垂直・水平ではないこと。角度があるので合わせるのにかなりの神経を使いました。3Dだと、初期の接合でズレると後でまったく合わなくなってしまいます。最後のパーツが繋がったときは感慨深かったですね」(足立)
 竣工して約1年経った際も、集塵機は何のトラブルもなく稼働していた。鈴木は振り返る。 「すばらしいチームで仕事させてもらいました。みんなが自分の担当に責任もって難しい局面も乗り越えた。苦しかったけれど楽しかった。お客さまからの期待があり、それに応えて、ちゃんとしたものをつくる。自己満足ではなく『世の中に役立っているものをつくっている』と感じられるから、楽しいんじゃないかな」

 

高炉 製鉄用の溶鉱炉。鉄鉱石とコークス、石灰石を入れて溶錬、下方に溜まった銑鉄を取り出す。
DL ドワイト・ロイド式連続焼結機の略
焼結  鉄鉱石をそのまま高炉に装入すると目詰まりするため、コークスと5~15%の石灰石を混ぜ、一定の大きさに焼き固める工程。
環境対策 製鉄所の工程には燃焼現象が欠かせない、しかし規模が大きいため、大気汚染物質の大きな発生源になっている。そこで必要になるのが、二酸化炭素、原料ヤードにある鉄鉱石や石灰石の粉塵などの飛散を防止する対策など。
  • 足立 純

    足立 純

    工事部工事課
    2005年入社
    都市環境デザイン学科卒

     

    入社当初は設計がいいと思っていたけれど、現場でモノと対峙している、いまの監督の方が性に合っていますね。目標はひとつの工事の全体を監督すること。